第21回 アニメーション部門 優秀賞

COCOLORS

オリジナルビデオアニメーション(OVA)

『COCOLORS』制作チーム(代表:横嶋 俊久)[日本]

作品概要

有害なバクテリアを含んだ灰から逃れるために、人類がスーツとマスクをしながら地下で生活する世界を舞台にしたアニメーション作品。嘘ばかりつく少年アキと、楽器だけで会話する少年フユの、マスクで表情が見えない中に生まれるコミュニケーションを軸にして地下世界に訪れる危機が描かれる。 監督と脚本を担当した横嶋俊久は、マスクで顔が見えないという設定を生かし、身ぶり手ぶりや走る、跳ねるといった動きによって、それぞれのキャラクターの性格や心情を描写した。制作スタジオは、3DCGによるアニメーション制作で近年高い評価を得る神風動画。木版画を思わせるフラットな描写ながらも、世界観を余すことなく表現する絵づくりが目を引く。また本作は映画館で効果音のみの映像を流しながら、声優が声を合わせミュージシャンが生演奏で音楽をつけるVoice Actor vs Silent Movie上映方式という挑戦的な試みを行ない、その場でしか得られない経験を重視した新たな上映形態も提示している。

贈賞理由

この映画は主人公たちの顔を見ることができない。これがこの映画の肝である。 生存のため潜水ヘルメット型のマスクをつねに装着した住人たちの物語は、地下の狭い世界で展開され、観客は常に表情の見えない主人公達を見る事になる。そしてこのマスクが物語を覆う閉塞感と見事にシンクロしており、観る者の想像力を掻き立てる優れた映画である。閉塞感の象徴としてのマスク、そのマスクを外すことは閉塞感から解き放たれることだ。そしてそれは同時に生命の停止を意味する。主人公はマスクを外し灰色の空を見た友に言う。「まだどんな色でものせられる」「空の色はここ(心)にある」。決して絶望だけではなく希望も残して物語は終わる。この映画には時代を象徴する閉塞感と同時に、モノトーンの世界に色を重ねる少年の地上への憧れが重層的に描かれ、表現手法とテーマが見事に融合している。また人間の重みを感じさせるCGをはじめ映像表現もとても素晴らしい作品だ。(西久保 瑞穂)