第23回 アート部門 新人賞
drawhearts
メディアインスタレーション
Sebastian WOLF [ドイツ]
作品概要
小型の噴射器でガラス板に蒸気を噴きかけて曇らせ、電気式のアームがそこにハートの形を描き続ける装置。ガラスに描かれたハートはゆっくりと消えてしまうが、装置は上下運動をしながら蒸気を再び噴射して、ハートを描く行為を延々と繰り返し続ける。機械が感情を持たないことを強調するため、本作の装置は透明のプラスチックパーツを中心につくられており、構造や仕組みがすべて目に見えるようになっている。機械でしかない存在が、人間の心を象徴するハートの記号を描き続けるだけの装置によって、「人間と非人間の違いとは何か」「何をもって人間とみなされるのか」といった疑問を、構造によって提示している。
贈賞理由
親しみのある、パーソナルで人間的なアクションを飽きることなくシミュレートしている。ガラスに息を吹きかけると、一時的に表面に絵や文字を描くことができる状態になり、消え去る前に、親密な人にのみ贈られる愛のメッセージ、ハートが描かれる。『drawhearts』はこの個人的なアクションをひとつずつ実行し、何度も繰り返す。この繰り返しは何を意味しているのか。愛を見つけ、完璧なひとときを捉え、そして繰り返すことで、記憶を再現することはできたのか。人間以外のモノが愛と共感を求めるという試みは、人々に何かを伝えたのだろうか。(ゲオアグ・トレメル)