第12回 エンターテインメント部門 優秀賞
FONTPARK 2.0
ウェブ
中村 勇吾 [日本]
作品概要
フォント(字体)メーカーのウェブサイト上のコンテンツ。文字を一画までばらし、さまざまに組みあわせてイラストを描くことができる。投稿された作品を閲覧すると、イラストを組みたてる過程まで見られるようになっている。フォントの形姿の美しさがイラストにも反映されており、日本で文字(書)とイラスト(画)が一体であった伝統を思いおこさせる。
贈賞理由
この作品上で表示されている「絵」は、このサイトを利用する人々の苦心作の数々である。つまり、この作品は表現する場であり、新たな作品を生成する高度なソフトウェアである。それが優れているかどうかは、それを使ってつくられた「絵」の質を見れば一目瞭然で、ユーザーの創造性を喚起する力を持っている。日本語の書体という複雑な素材をここまで分解する技術と、自分のマウス捌きがそのまま指先のように感じられるインタラクティブ性は斬新で、自由自在に操れる感覚は、最新のゲーム機にもない高い独自性を持っている。また、描いているうちに日本語書体の持つ美しい曲線や、思いがけないディテールも発見でき、書体メーカーの「モリサワ」という主題の落としこみも見事だ。さらに、何よりもおもしろいのは、絵を描こうとした人の「苦心」が見られることだ。形や配置をどうするか、最初から最後までを悩むさまが小気味よく短時間で再現されていくのを眺めるのは微笑ましくも新鮮だ。「ちょっとやってみようか…」と気持ちが動くこの仕掛けは、まさにエンターテインメントといえるだろう。