第12回 アニメーション部門 優秀賞
カイバ
テレビアニメーション / オリジナルビデオアニメーション(OVA)
湯浅 政明 [日本]
作品概要
記憶のデータ化が可能となり、肉体の死が死ではなくなった世界。記憶はデータバンクに保存され、新しい体への乗りかえや記憶の売買、窃盗が行なわれ社会は混沌としていた。ある日壊れた部屋で男が目覚める。記憶がないその男の名はカイバ、そして彼に襲いかかるさまざまな攻撃。記憶をめぐる戦いをダイナミックに描いた意欲作。
贈賞理由
刮目した。懐かしさを伴うそのビジュアルに対するダイナミズムたるや、まさに現代ならではの激しさと伸びやかさで彩られ興奮を禁じ得ない。だれも見たことのない世界観を構築し、生と死、肉体と記憶を対位させたハイブロウな主題と一見プリミティブなビジュアルでありながらTVオンエアを前提とした連続アニメーションとして制作された点も驚きである。監督の湯浅氏は初監督作でありながら、2004年度文化庁メディア芸術祭大賞の栄冠に輝いた『マインド・ゲーム』以降、2006年の『ケモノヅメ』と、商業目的の枷に囚われることのない作品づくりに挑みつづけている。その揺るぎなき姿勢にも心動かされる。そして、これらの野心的アニメーションが大人のためにつくりつづけられ、観客に受けいれられる環境こそ豊潤の証と信じたいし、その出資制作体制が衰えることなく発展しつづけることを願いつつ、この果敢な挑戦に惜しみない拍手を送りたい。