第12回 アート部門 優秀賞
Moment – performatives spazieren
映像作品
田口 行弘 [日本]
作品概要
ギャラリーの床板がはがされ、壁に整然と立てかけられる。やがてその床板は、窓からベルリンの町に跳びだしていく。床板は並べられたり、這うように進んだり、都市の場所にあわせさまざまに組みあわされ形を変えていく。床板を組みかえながら約2,500枚の画像を撮影し、アニメーションに仕立てた作品。
贈賞理由
ギャラリーの床に敷きつめられた板が、あるときはまるで生き物のようにコミカルに、またあるときは街を構成する建築物のように、変化し動きつづけていく不思議なようすを描いたストップモーション・アニメーション作品。デジタルスチールカメラによって撮影された数千枚の画像と、肉体的な努力によって描かれた情景は、観客を飽きさせずにラストまで導いてくれる。卓上だけの狭い世界で完結することが多い、ストップモーション・アニメーションを、都市空間のなかで展開した発想と大胆さがすばらしい。この作品の根底には、最近のデジタルスチールカメラのアナログカメラにも引けをとらない表現力と、デジタルならではの簡易さ、そして、集積された画像を簡単に動画展開することを可能にした、各種ソフトの進化があげられるだろう。映像だからビデオカメラを使うという一般認識はもう通用しない。この作品は、新しいテクノロジーが創りだす価値を十二分に活かした秀作だ。