© 白井 弓子

第11回 マンガ部門 奨励賞

天顕祭

自主制作

白井 弓子 [日本]

作品概要

ある時代を舞台に、足場鳶の若頭と少女の交流を描いた自主制作作品。若頭・真中は天涯孤独の少女「木島咲」を雇う。仕事を身につけた彼女に、その後変化が起きる。祭に秘められた真実とは、そしてふたりの運命は?

贈賞理由

ある時、この国を襲った「汚い戦争」によって国土のあちこちにばらまかれ、残された「フカシ」という毒素を若竹に吸収し浄化させようとする地域の物語。その土地には昔から伝わる祭りの主役「クシナダヒメ」(大蛇「ヤマタノオロチ」に見初められた)に選ばれた犠牲の少女と、それを阻もうとする鳶の若頭の淡く激しい恋物語は、一昔前の、モノクロの名作映画を観ている雰囲気で久しぶりに胸がときめいたものだ。組んだ竹の隙間から、あるいは地の底から大蛇が少しずつ姿を現してくる演出や、登場人物それぞれのキャラクター表現、斬新な構図、静かな眼の演技などに作者の鋭い才能を感じるし、まずはもって自費出版という地味な世界からの挑戦と知って、同じ環境で頑張っている若者達を励ましたい意味もある。