© TSUDA Michiko / Photo: YAMAMOTO Tadasu

第20回 アート部門 新人賞

あなたは、翌日私に会いにそこに戻ってくるでしょう。

メディアインスタレーション

津田 道子[日本]

作品概要

枠(フレーム)という、絵画・映像史で幾度も論じられてきたモチーフと、鏡、ビデオカメラ等を用いたインスタレーション作品。作品タイトルは、自由間接話法の典型的な英文に由来している(ただし通常は主語が三人称)。文脈により「翌日」「そこ」の対象が変わるタイトルと、鑑賞者とその像と空間との関係から「いま」「ここ」とは何かを問う作品体験が対になっている。天井から吊るした12の枠には、鏡やスクリーンが張られたもの、枠だけのものが入り混じる。スクリーンにはリアルタイムの映像や、24時間前の展示空間を捉えた映像が投影される。観賞者は鏡に映る像、スクリーンの映像、さらに空枠越しの実像が織りなす視線の迷宮を進み、さまざまに変化する自身と空間との関係を観察する。

贈賞理由

一度この作品に自分の身体を投げ込むなら、我々はぐるぐるとこの静かなフレームの森を歩き続けるだろう。それはこのインスタレーションに、なぜフレーム越しに見える世界は括られているだけで輝いて見えるのだろうかという、映像についての抜本的な問いを生む力があるからだ。フレームを覗き込む自分自身の背中を見る経験は、やがてシンプルだが秀逸なしかけによって思考の枠組みそのものの次元を拡張させる。生々しい身体的経験は複製され、フレームの中で明日を生きるのだ。その表現の新鮮さと緊張感、思考の厚みを評価する。(石田 尚志)