7回 受賞作品エンターテインメント部門Entertainment Division

大賞

優秀賞

奨励賞

審査委員会推薦作品

審査講評

  • 宮崎 光弘
    アートディレクター
    【作品カテゴリ別講評】Web
    エンターテインメントを「人を楽しませる」または「人をもてなす」という広義の意味でとらえると、Webもゲームと同様に元来エンターテインメント性を大変多く含んだメディアであると言えよう。しかし、メディアの特性としてエンターテインメント性を持ち合わせているWebであるが、目的が多種多様であるために、そのエンターテインメント性も非常に多くの方向性を持っている。コンテンツそのものが高いエンターテインメント性を持っている場合もあれば、サイトのインターフェースがエンターテインメント的な特徴を持った作品もある。またWebの最大の特徴であるネットワークという仕組みで、エンターテインメントを実現している作品もある。このように一口にWebでのエンターテインメントといっても、その方向性は多用でありそれをひとつの評価軸で審査することは大変困難であった。逆に言えば、そのようにさまざまな方向のWebのエンターテインメント作品が集まったことは良かった点でもあるが、作品のひとつひとつのクオリティーが他のジャンルのエンターテインメント作品に比べ、残念ながらもうひとつであったことも事実である。今回の応募ではWeb作品をアート部門とエンターテインメント部門のふたつの部門で募集したので、それも要因のひとつだったかも知れない。次年度においてはエンターテインメントとしてWeb作品が、さまざまな方向性で且つ高いクオリティーで数多く集まることを期待したい。
  • 石原 恒和
    【作品カテゴリ別講評】VFX・キャラクター・その他
    非常に広範な領域をカバーしている部門であったので、コンセプトから表現技法や、その実現形態に至るまで、非常にバリエーションが多かった。動画映像によるものから、立体造形として動くもの、メディアとサービス、書籍、ポスター、玩具、キャラクター商品提案に至るまでが、ひとつのカテゴリーにおさめられたのは、例のないことであったと思う。その幅の広さと雑多さからみるとエンターテイメント部門において、最もエンターテイメントらしい領域と言えるかもしれない。審査においては、オリジナリティ、挑戦性、クオリティーだけではなく、さらに複数の評価軸をたてながら総合的に判断した。エンターテイメント部門なので、とにかく「遊び心」がしっかり感じられ、つくっている人間自身がそのプロセスを楽しんでおり、その気持ちが作品に滲み出ているようなものは、大切に評価された。プレゼンテーションの方法や丁寧さ、分かりやすさも、重要な評価要素にした。本部門の代表作である『スキージャンプ・ペア オフィシャル DVD』は、コンセプトのオリジナリティ、挑戦性、クオリティーも素晴らしいものであったが、なによりも作り手の「遊び心」が群を抜いて素晴らしく、審査会で全員が爆笑してしまった作品は、唯一この作品だけであった。この部門は巨額を投じた大型プロジェクト作品の出品が非常に多かったが、その中で、アイデアと努力があれば、人々を虜にするような作品ができることを実証している。
  • 鈴木 裕
    ゲームプロデューサー
    【作品カテゴリ別講評】ゲーム
    ゲーム部門は、80作品以上の応募があり、殆どが企業からの応募でした。日本を代表するエンターテインメントとして、クオリティーの高い作品も多く、その中で個人の作品をどう評価するかが審査の難しさでもありました。
    大賞の『ファイナルファンタジー・クリスタル クロニクル』は、映像、音楽、インタラクティビティーという面で、どの指標においても質が高く「触って楽しい」バランスのよい良質なゲームといえます。
    優秀賞の『アイトーイプレイ』は、自分をカメラで写しゲームの中に自分を映し出し参加させるというところが、新しい試みであり、また『しばいみち』は、マイクデバイスを用いて演劇の中で、キャラクターをいかに演じられるか?という部分に特化した所が良かったと思います。今回の最終審査まで残ったゲームは、どれをとってもユニークで、今後の遊びの広がりを感じることができました。
    少数ではありましたが、学生からの応募もあり、中には独特な雰囲気を持っている作品もありました。しかたないことですが、企業との作品と比べてしまうと、クオリティーの面では、やはり見劣りしてしまうものが多かったのも事実です。但し、ビジネスとして考えられていない分、発想が自由で、大変興味深い作品が数点含まれていたことが印象に残ります。来年は、一層ユニークなアイデアや発想の作品がより多く学生の方や個人からエントリーされることを期待しています。
  • 中島 信也
    CMディレクター
    エンターテインメント部門は、ゲーム、Web、VFX(映像)、キャラクター、遊具その他、という多彩なジャンルからなる新設部門である。今回の審査結果が今後のこの部門の性格付けに大きな影響を与えていく。いったいどのジャンルの作品が勝ち抜いていくのか、当初は全く予想がたたなかった。だが、審査が始まると、いきなり圧倒的な強さを見せ付けたのがゲームであった。なかでも大手ゲームメーカーによる大作は一筋縄ではない。現代の日本を代表するコンテンツとしてのプライドのもとに、「絶対にいいものにして楽しませければいけない」というプレッシャーと戦い続けて作られているだけのことはあって、さすがに圧巻である。
    これに比較すると、部門内の他ジャンルは正直なところどうしても見劣りがしてしまう。Webについては全体的にアート部門での受賞作にあったような斬新性が見受けられるものが少なく、物足りなかった。VFX(視覚的特殊効果)については、圧倒的なクオリティーのハリウッド作品が立て続けに公開されているという環境下での評価となるわけで戦いは辛い。そんな中で我々はスケールの大小や技術の高低ではなく、エンターテインメント・コンテンツとしての作者のアイデアとセンスが光るものを評価した。今回受賞は逃したがCM作品にもその独創性においてきらりと光るものがあり今後が期待される。遊具は絶対的な応募数が少なかったのであるが、人気キャラクターを自由に繰ることができる『ポケモーション』の楽しさと完成度に評価が集まった。
    結果的に今回のこの部門の審査は、賞の持つ「今年を象徴する圧倒的なクオリティーを持つ作品をきちんと評価する」という面と「今後大きな期待を寄せることができる注目すべき作品にスポットライトを当てる」という面の両面のバランスをうまくとりつつ評価できたのではないか、と思っている。ただ、部門の分け方など残された今後の課題も多い。