8回 受賞作品アニメーション部門Animation Division

大賞

優秀賞

奨励賞

審査委員会推薦作品

審査講評

  • 寺井 弘典
    【作品カテゴリ別講評】短編アニメーション
    短編アニメーション作品は多数制作されているにもかかわらず、普段、目に触れることが少ないジャンルである。その露出不足な閉塞感を打開してくれるような、潜在能力をもっているか? 何回も鑑賞できる独自性があるか? コミュニケーションの場を広げていく可能性があるか?を選考のポイントにした。『カクレンボ』、『神谷通信』、『元祖マジックサーカス』など完成度的には申し分ないのだが、ストーリーの語り方、構成にもっと工夫と創意があってよかったのではないかというのが悔やまれるポイントで、技術力の高い作品ほど華やかな反面、訴えたい内容の薄まりが気掛かりである。また、テーマを絞り込んだ短編作品として、言いたいことを効果的に言い切っている作品を高く評価したい。的確な観察力と隙のない構成力『LOOP POOL』、韓国の戦争体験を鮮やかに描き切った『BIRTHDAY BOY』。『夢』『TRAIN SURFER』はアニメーション技術を駆使した作品ではないが、これも楽しいアニメーション作品なんだということを認めていいはずだ。これからも広義の意味での「アニメーション」作品の応募にも期待したい。
  • 神村 幸子
    アニメーター
    【作品カテゴリ別講評】長編アニメーション・OVA
    今回、大賞の選考にあたりついに結論がでなかった。『ハウルの動く城』を推す委員2名、対、『マインド・ゲーム』を推す委員が3名で、2対3ということでもあり、主査裁定で『マインド・ゲーム』を大賞としたが、審査の経過を明らかにすることによって、審査委員以外の方々に審査が公正に行われたものであることの理解を得たい。最終審査は各委員が最終審査に残った14作品に点数をつける方法で行われた。合計点では『ハウルの動く城』が1位、『マインド・ゲーム』は2位であった。点差の理由は『ハウルの動く城』がすべて平均点以上なのに対して『マインド・ゲーム』には最低点評価もあったためである。『マインド・ゲーム』は評価が両極端に分かれる作品で、最高傑作であるという意見と、不快で耐え難いという意見があった。次にそのほかの劇場用作品だが、評価が分かれたため受賞にはいたらなかったがすばらしい作品があり、テレビシリーズにも『妄想代理人』や『サムライチャンプルー』などテレビ用作品の水準をはるかに超える作品が多々あった。日本のアニメーションの水準が確実に上がっているのを感じて嬉しい。
  • 富野 由悠季
    アニメーション監督・演出家
    アニメ先進国だからこそ、新たな気持ちで創作への挑戦を
    デジタル技術が一般化した現在、予想されたことではあったが、画像主導型の作品が大半であったのは残念である。大賞の候補になった『ハウルの動く城』と『マインド・ゲーム』については、前者の手堅い作りとメジャーの力量を認めるものの、結末について作品テーマとの齟齬を認めざるを得ないという議論があった。後者については、表現のあり方が本芸術祭にふさわしくないのではないかという議論があったものの、物語のテーマと現代の歪みを直截的に表現しているストーリーテリング、そして、アニメでしか描き得ない技法をもって、誤解なく一般的な映画といえる様式を獲得しているので評価できた。他の長編作品については、一部の審査委員の嗜好に合った部分での評価がないではなかったが、基本的には選評の対象にならなかった。アニメが社会的に認知されているという錯誤に基づく製作態度や、もともとアニメなどはレベルの低い仕事であるという潜在的な認識を証明するような現れ方は、当事者として正視することができなかった。上等な媒体でないという認識に立つなら、せめて内向せず公共に楽しさを与えるものであってほしいと思うのである。短編についても同じ傾向があるからこそ、新興の意識に根ざしている風土から優れた作品がここに応募されたことに感謝している。それが『BIRTHDAY BOY』であり、時代性を表現しながらも、情に流されない明快な展開に感服した。アニメ先進国のスタッフはこの作品から学ぶべきものが山ほどあると感じた。また『ACIDMAN short film 』には技法と表現すべきテーマの一致を見て、活力があり、その表現スタイルに好感がもてた。『夢』という佳作には物語性を具有する映像のあり方をシニカルに獲得していて嬉しい。伝統と慣れ仕事に埋没しているスタッフのメンタリティというものは、国境を越えて同列であるのだから、新たな気持ちをもって創作に挑戦していただきたいと関係各位にお願いいたしたい。