9回 受賞作品アニメーション部門Animation Division

大賞

優秀賞

奨励賞

審査委員会推薦作品

審査講評

  • 寺井 弘典
    【作品カテゴリ別講評】短編アニメーション
    短編作品は応募数も伸び、刺激的な可能性をみせている。このフェスティバル自体がプロもアマチュアも同じ土俵で審査されるスタイルであり、その特徴を生かす選考を考えたい。それだけに審査は困難を極めたが、あえてプロのこなれた仕事よりは、まだ未開発でも、荒削りでも、これからの若く新しい感受性に期待を寄せることが審査会の総意となった。一見、プロ、アマの棲み分けができているかのようにみえるアニメーションの世界に刺激を与えたい。プロといわれているクリエイターほど保守的であり、自分のスタイルに閉じこもり挑戦を避けているかのようだ。プロこそが若手の規範になるようなトライアルをみせるべきであり、アニメーションの現場が自己保身の趣味的な逃げ場や欲望昇華を煽るビジネスの場であってはならない。この19作品はどれも挑戦を続けるクリエイターによる作品で、内容もバラエティに富んでいる。子どもに勇気を与える『ジャム・ザ・ハウスネイル』『ビップとバップ』。アニメーションに真正面から立ち向かう姿勢がみえる『或る旅人の日記赤い実』『Vaudeville』『ドロップ』『Birds』『CALM』『私の家』。『惑星大怪獣ネガドン』にも圧倒された。『診察室』や『愛の部屋』『あるひとつの方向性』の作者は可能性を感じる。そして優秀賞3作品と大賞も短編で、今年もこの部門に結集した新しい才能にぜひ注目してほしい。
  • 神村 幸子
    アニメーター
    【作品カテゴリ別講評】長編アニメーション(劇場公開・TV・OVA)
    商業アニメーション業界では近年の特徴として、若い制作会社の台頭があげられる。それらの会社は、目指す作品づくりへの明確な方向性と、力量あるスタッフの制作現場への手厚い配置とで、作品の完成度を高く維持することに成功している。好みも分かれるであろうし、足りない部分もあるかもしれないが、そうしてつくられた意欲的な作品が今年度も多数みられたことは素直にうれしい。受賞作品以外で例をあげる。『交響詩篇エウレカセブン』『タイドライン・ブルー』の 2作品は、技術的にどちらもテレビシリーズとは思えない圧倒的な出来である。これだけのものを週に1本つくり続けるのにどれほどの力量と手間が必要か、同業者としてただ感心するばかりである。『劇場版 鋼の錬金術師シャンバラを征く者』は内容に審査委員の一部から批判があったが、技術的にはよくがんばったと思う。テレビシリーズの『舞-HiME』『ハチミツとクローバー』『フタコイ オルタナティブ』『BLOOD+』はそれぞれ1話限定として優れた技術力に拍手をおくる。
  • 富野 由悠季
    アニメーション監督・演出家
    21世紀の新しい映像ストラクチャーの開拓を
    大賞に榊原澄人氏の『浮楼』という小品が選ばれたことが、今年度のアニメ状況を象徴しているだろう。選考審査の過程で時間を要し、議論も混迷を極めたのも、作品が拮抗していたからだ。短編部門は、内容、技術ともに成熟していく傾向がみられて、審査そのものは楽しいものだったが、「変化する機能」をいかに映像作品として構築するかという一層の理解がほしいと思った。長編部門では、商業主義という通念からも逸脱しているのではないかと疑わせる作品もあり、ここにもドラマと感性の喪失を感じる。葛飾北斎の北斎漫画第三編の冒頭に「目に見えぬ鬼神はゑがきやすく、まぢかき人物はゑがく事かたし」という言葉がある。アニメ関係者は、この言葉の意味を痛切に理解して、21世紀の新しい映像のストラクチャーを開拓していただきたいと願っている。