12回 受賞作品アニメーション部門Animation Division

大賞

優秀賞

奨励賞

審査委員会推薦作品

審査講評

  • 木船 園子
    アニメーション作家
    【作品カテゴリ別講評】短編アニメーション
    デジタル技術の成熟でプロもアマチュアも同じ土俵で戦える武器を手にし、アニメーションはバラエティに富んだ豊かさを呈している。短編として応募された223作品からは際立って強く熱く訴えかける作品はそれほど多くなく珠玉作22本がすんなりと選ばれたが、大賞・優秀賞3本・奨励賞を出すという驚きの結果となった。『つみきのいえ』は芸術性と心に響くテーマ性がみごとに融合した入魂作で審査員文句なし一致の大賞。卓越したCG技術で独創的な世界を構築した『KUDAN』。手づくり刺繍の温かさを感じさせる『DREAMS』。注目すべき多くの若い才能にも出会えた一方で哲学の視覚化に挑戦した『こどもの形而上学』、ほのぼのした世界を高い技術力で見せる『ニャッキ! ふみきり』『ギンガムチェックの小鳥』。これらアニメーションへの愛と執念とチャレンジ精神を持ちつづけるプロのクリエイターにもエールを贈りたいと思う。
  • 幾原 邦彦
    アニメーション監督
    【作品カテゴリ別講評】長編(劇場公開・TV・OVA)
    最終審査の過程で、このジャンルからは「今年は受賞該当作品なし」という厳しい声もあったが、審査を終えて改めて気がついたことがある。『カイバ』『スカイ・クロラ』『ヘルズ エンジェルス』『ソウルイーター』『空の境界』『墓場鬼太郎』。驚くなかれ、これらの作品はすべて"彼岸"が舞台である。「死者と生者を分ける川辺」が2008年のキーワードだったようだ。「彼岸とは、我々が暮らすこの世界のことだ」、あるいは「生きているのか、死んでいるのかわからない」とでも言っているのか。「死を意識することは、生を感じること」とだれかが言っていた。いま、アニメはそこなのか?なかでも『空の境界』を選に入れるか否かで意見が分かれた。「新しい」と捉えるか、「過去作品の引用にすぎない」と見るか。喧々諤々、「次の機会まで判断を待とう」ということで今回は選を外した。どうやら"彼岸作品"の審査は、審査員まで彼岸に連れて行ったようでモヤモヤした気分が残った。
  • 鈴木 伸一
    アニメーション監督
    今年の応募は総数346本。今年の特徴としては短編部門によいものが多く、それにくらべて長編部門は突出したものがなく、大賞も短編部門の『つみきのいえ』がすんなりと決まった。地球温暖化を巧みに取りこんだ不気味な静けさのなかに、ひとり家に住み続ける男、去っていった家族の思い出をしみじみ綴る味わい深い描写の優れた作品であった。優秀賞、奨励賞は議論をつくした上の決定であったが、やはり短編作品が多数を占めた。長編部門から優秀賞に選ばれた『カイバ』は、シュールな内容と新鮮な画面のOVAであり、どちらかといえば短編作品に近いテイストを持った作品といってもいいだろう。入賞はしなかったが短編作品のなかには優れたものが多かった。日本のテレビアニメの業界は経済的な問題で若い人が定着しにくい世界だと聞く。しかし、個人で活動する短編のアニメーション作家には、確実に若い人が増えていることを実感する年になった。