14回 受賞作品エンターテインメント部門Entertainment Division

大賞

優秀賞

奨励賞

審査委員会推薦作品

審査講評

  • 寺井 弘典
    メディアの可能性を押し広げる
    この部門は、絶えず産業の最前線を彩り、競争と進化の渦中に曝されながらも、新しい可能性に果敢に挑まなければならない領域なだけに、さまざまなトライアルを味わえる。映像とWebはその立脚点を問いながらも、多くの挑戦が見られた。特に今年はTwitterが最も注目された年で『IS Parade』はかなり早い段階でTwitterの概念を分かりやすくエンターテインメント化したのが印象に残る。また映像とWebが融合した試みも当たり前のこととなり『Tabio Slide Show』『SHIRO CHEERS SYSTEM』のようなコンテンツはとても楽しい。ゲームは大作シリーズと小規模のものに2極化し、SNSゲームなど、注目されている領域からの応募が少なかったことが悔やまれる。エンターテインメントがメディアの可能性を押し広げている刺激的な現場に、より多くの人に立ち会っていただき、さらなる応募の増加を期待している。
  • 斎藤 由多加
    ゲームデザイナー
    今一番ホットな作品を審査したい
    映像は斬新な作品、多いですね。Webも、遊戯も、なかなかユニークな作品が多い。ところが、ゲームの応募作品が、最近いまひとつというのが審査委員たちの印象なのです。シリーズものや、既存作品のリメイクなど、要するに「ゲーム」である肝心の部分は新しくない、という現象。これは、業界の構造的なものだろうと思われますが、メディア芸術祭としては、そのあたりに斬新さを求めているわけでして......。
    この部分で、野心的な試みをもっともっとしてほしい。それを世界に紹介したい、と審査委員としては強く思っております。
    SNSゲームの応募も少ないのが気になりました。パッケージじゃないと応募しにくいあたりは事務局も進化してくれれば......。ですが、とにかく友人・知人に声を掛けて今一番ホットな作品応募を促したいのであります。
  • 内山 光司
    クリエイティブディレクター
    大きな曲がり角の先にあるもの
    広告に本籍を置く身として残念だったのは、平均して「広告」が魅力的でなかった点です。かつては広告から、新しい表現や人々の心をつかむアイデアが世に広まっていった時代もありました。しかし今やそれはMVやインタラクティブアートから生まれてきます。実際これらの領域には刺激的な作品が数多く散見されました。同じようにゲームにもやや停滞感が感じられました。もちろんこの1年、やり応えのある作品が数多くリリースされましたが、それらのほとんどはいわゆる「続編」もので、世に新しい「遊び」を提示してきた過去の受賞作品に比べると、斬新さに欠ける印象があります。その一方で、MVの魅力的な作品は、従来の映像手法ではなく、新しい視覚体験の提供に挑戦していました。エンターテインメントそのものが、大きな曲がり角を迎えているのかもしれません。それは逆に「これから」が楽しみなことでもあります。
  • 伊藤 ガビン
    編集者/クリエイティブディレクター
    作品として摘出できない作品たち
    ゲームの審査は難しかった。大作ゲームの続編を、どうとらえて評価すればよいのか? 新しいアイデアを小さくまとめた作品と、どう比較すればよいのか? 評価する軸がかけ離れ過ぎていて、比較できないのだ。しかしこれは単純に、圧倒的な新しい作品に出合えなかっただけのことなのだろう。率直に言って日本のコンシューマゲームは迷走している。一方でエンターテインメントの世界が枯れているのかといえば、そんなことはなく、日々僕らはさまざまなものに魅了されて生きている。ここ数年なら、ネットを使ったソーシャルな遊びにずいぶんと耽溺した。しかしそれらは単独で取り出して「作品」として評価できるものなのか? という疑問もある。今回審査員の支持を多く集めた作品たちは「作品」として摘出できない現在形のエンターテインメントの状況とリンクしたものたちだ。
  • 堀井 雄二
    ゲームデザイナー
    作品制作に必要なものは、人間のセンス
    今回、初めて文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門の審査委員をやらせていただいた。エンターテインメント部門と一括りにしてはいるが、作品の種類が、ゲーム、遊具、映像、キャラクター、Webなど多岐に渡り、これらを同一線上で審査するのは、かなり難しいものがあり、審査会も白熱した内容になった。
    そんな中にあって、Twitterを素材にした『IS Parade』が、その動きのユニークさを含め、多くの審査委員の票を集めて見事、大賞に輝いた。これも時代といえば、時代であろう。
    ゲームについていえば、制作費の高騰によるものなのか、応募作品には、ある程度売り上げが見込めると思われるシリーズの続編ものが多く、それはそれでエンターテインメント性も完成度も高いものだったが、ただ、今回は続編物の作品には厳しい結果となってしまった。残念である。
    コンピューター創成期と違い、デジタルなメディア、インタラクティブなメディアが当たり前になってしまった現在、そのメディアのあり方自体に、人々は驚かなくなってしまった。「すごいCG映像」や「ちょっとしたインタラクティブ性」だけではもはや人々を楽しませることはできないのである。
    エンターテインメントをつくるのに必要なものは、やはり人のセンスであろう。そのことを改めて感じさせてくれた審査会であった。