7回 受賞作品アニメーション部門Animation Division

大賞

優秀賞

奨励賞

審査委員会推薦作品

審査講評

  • 山村 浩二
    アニメーション作家/東京藝術大学大学院教授
    【作品カテゴリ別講評】短編アニメーション
    選考の基準としては、短編として独立した説得力をもっているか、アニメーション独自の表現が見られるか、興味深い内容を持っているか、などとした。今回の応募作、数は増えたが水準に達している作品が少なく、気持ちよく選べなかったのが残念だった。それでも幾つか印象に残る作品に出会えたのは多数の応募作を見ていく中の救いだった。
    受賞作以外で例を挙げると『スモールランドジャズ』は、伝統的な実験映画で、所々ハッとさせられるアイデアがあったが、コンセプトの統一と音楽の構成をもっと突詰めてほしかった。『ファンタスティック セル』は、クラシックなアニメーション・テーマではあるが、アニメーションの偏執狂的力を出した作品で興味深い。ただオスカー・フィッシンガーやマクラレンほど音楽と映像の一体感に成功していないのと、音楽のアレンジに工夫がないのが残念な点だ。『レッドキャタピラー』はクオリティーとしては疑問が残る作品だが、全体的に病理的な応募作が多かった中、意識的か無意識的かは判断つかないが、現代社会の不安感を色濃く表出している作品として最終選考に残した。
    優秀賞の「こまねこ」は、人形アニメーションの技術としての高さとバランスが評価された。ただ語っている中身の貧弱さは、今多くの短編アニメーションに共通している問題である。
  • 神村 幸子
    アニメーター
    【作品カテゴリ別講評】長編アニメーション
    テレビ・OVA 60本、劇場用映画24本、その他10本。つまり短編以外、おもに商業作品になるが、これらを長編として審査した。劇場用作品は、時間と予算と才能を大量に費やした大作がいくつかあって、こられは技術的にどれも完成度が高かった。国内で一定水準以上の映画作品を一年に何本も作れるようになってきていることは嬉しい。
    OVA作品は、それ自体が商品なので売れるものを作ることが優先されているのがわかる。その結果、作りは安定しているし絵柄も感じよいのだが似たような美少女ものが多く、突出して目立つ作品が今回はなかった。ビデオシリーズ化されている作品も多いので、1話だけを抜き出すと内容が多少薄めになっているのもいなめない。技術的には、制作期間の短いテレビではできないが、ビデオならできる、という挑戦をした作品があって、これは技術的には成功していた。
    テレビシリーズ作品は、数的にはもっとも応募が多かった。しかし、シリーズものはシリーズ全体を見ないと作品としての評価がむずかしい。それでも、単純にアニメーションとして楽しいと思ったものと、シリーズ全体を通して完成度の高かったもの、計2作品が最終審査まで残ったのはかなりの健闘だと思う。
    最後に、低予算ながらスタッフの努力で目的を充分に果たした教育用ビデオ作品があったことをつけ加えたい。この作品は受賞の対象にはならなかったが、最後まで楽しく見られた。
  • 高畑 勲
    今回は、長編と短編に大別して候補作を選び出し、それらを突き合わせて最終的に受賞作品を決めた。娯楽的な長編作品群には安定した表現技術がまず求められ、個人制作的な短編作品群には独創性や芸術性がまず問われる。この両者を同一の基準で評価することは不可能なので、審査は難しかった。長編作品の多くは一定以上の技術水準を充たしていたが、内容と表現の点で讃えなければならないほどではなく、短編作品の多くも、独創性と芸術性が豊かであるとは言いがたかった。大変残念である。
    『連句アニメーション「冬の日」』は、「座」の文学、すなわち連想・連作による合作という日本の文化伝統を、複数の作家のアニメーションで追体験しようとする大変野心的な企画。様式も技法も異なる国内外の作家達35人を集めて、このような無謀な試みを成功させたことは今年度の快挙であり、大賞は当然だった。技法のデパートとしての面白味もあり、発句のノルシュテインはじめ、中に珠玉の傑作が含まれていることにも注目した。『東京ゴッドファーザーズ』は、実力のある監督が巧みな演出で、現実性のないお話に、ある種の現実感を与えてみせた娯楽大作。大賞に、という声もあったが、問題なく優秀賞に決まった。誇張された人物を作り、その台詞表現で三人三様のいわゆるキャラクターアニメーション(性格描写)を試みたことも評価された。
    『ガラクタ通りのステイン』は架空の小世界と人物で小寓話を語るという可能性を示し、『FRANK』は原作マンガの擬古的な味をよく出している。また『こまねこ』は愛らしく、奨励賞の『星の子』は丁寧な仕上がりで、それぞれ好感の持てる作品だったが、いずれも審査員全員を感服させるほどの力があったとは言えない。
    結果的に、長編よりも短編的作品の受賞数が上回ったのは、いわばすべてが奨励賞であり、長編への刺激も含め、日本のアニメーションが今後さらに多様な発展を遂げるための励ましの意味も大きい。