©︎ Shota Yamauchi Photo: Keizo Kioku

第25回 アート部門 優秀賞

あつまるな!やまひょうと森

メディアパフォーマンス

山内 祥太[日本]

作品概要

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、私たちのコミュニケーションは直接対面するのではなく、パソコンを介して遠隔で行う機会がより多くなった。しかしその体験はリアルとバーチャルでは異なるものであり、完全に代替されるものではないという作者の問題意識から同作は発想された。体験者は任天堂の発売したゲーム『あつまれ どうぶつの森』(2020)を模したゲーム画面を操作することによって、展示空間でパフォーマンスする人間を操ることになる。仮想的なゲームの空間と現実の空間を連動させることにより、ゲーム体験が本来的に持つ暴力性と、現実で行われていることに対する不気味さといった感情が呼び起こされる。この作品は私たちが人間であることを再認識するためのプロジェクトであり、コロナ禍にあって抑圧されている肉体性を顕在化させながら、デジタルに囲まれた現代の私たちの生活環境も反映している。

贈賞理由

あつまれとは言えなくなってしまった社会で加速した、ウィンドウを介したコミュニケーション。コロナ禍に端を発した応募作品のなかで、物理空間とサイバー空間を生きるリアリティを見つめた本作の、簡潔かつ確かなコンセプトが際立った。バーチャル上の「やまひょうくん」やその環境を操作するのは、ネットワーク越しに観客から届くコマンドに応える形で、アイテムを代替するダンボールや、自らの位置情報を読ませていく作者本人である。大ヒットゲームを参照したという本作。もしも、ゲームの裏で物理的な身体が世界を駆動していたとしたら。ユーザーがアルゴリズムに対しては自分の欲望とも意識していなかったものを、人を介することで突然どこか居心地の悪いものに一転させる軽妙さ。2つの世界を身体でつなぐことで明快に提示しつつ、画面の向こうの滑稽さや不穏さといった生々しいノイズを取り戻させる不敵なユーモア、それを緻密な作品設計が支えている。(竹下 暁子)