14回 受賞作品アニメーション部門Animation Division

大賞

優秀賞

奨励賞

審査委員会推薦作品

審査講評

  • りんたろう
    アニメーション監督
    閉塞感と、崖っぷちぎりぎりの情熱
    第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門の大賞を見事射止めた『四畳半神話大系』を筆頭に、優秀賞を受賞した4作品、奨励賞に入賞した1作品は、すべて力作揃いであった。
    どれをとっても、昨今の閉塞感漂う制作状況の中で、崖っぷちぎりぎりの情熱をつなぎ止めながら、1コマ1コマをつくり上げ、それぞれのクリエイターたちが、緻密な構成と表現力を縦横無尽に駆使することで生まれてきた、素晴らしい作品たちである。
    今回、惜しくも入賞を逃したほかの推薦作品も、多種多様な作品世界を構築していて、それぞれ異彩を放っていた。
    周知のことではあるが、世界に冠たる日本のアニメーションの完成度の高さに、改めて惜しみない声援と拍手を送りたいと思う。
    フィルムは永遠に生き続ける!
  • 樋口 真嗣
    耳で感じるアニメーションの大切さ
    商業作品は言うにおよばず、自主制作における表現は、デジタル技術の恩恵で飛躍的に拡大した。創作意欲と結果の間に横たわる技術的な障害は消散し、芸術系大学からの応募作品には目を見張るものも多く、将来を期待せずにはいられない。忘れてはならないのは声の演技、音楽、効果音から成る音響である。デジタル技術の恩恵以上に同世代のクリエイター同士による協力、共同作業によって成し得ている点は見逃せない。激論のすえに大賞を獲得した『四畳半神話大系』での洪水のごときセリフの応酬、『フミコの告白』は主役を演じたヒナの絶叫なくしては成り立たなかったであろうし、『マイマイ新子と千年の魔法』でも主演の福田麻由子の表現力が物語世界をよりみずみずしいものにしている。絵のクオリティが平均的に底上げされた今、耳で感じるアニメーションの可能性を強く印象付けた今回の審査だった。
  • 氷川 竜介
    文化・表現・世代的にも節目の年
    審査委員を拝命したときから「今年の選定は難しくなるぞ」と覚悟していた。業務を通じて見てきた範囲だけでもかなりの意欲作・異色作が多く、バリエーションも豊かな当たり年だと思っていたからだ。その予想通り、審査も激戦となってしまった。涙を飲んで絞り込む局面も多く、大賞選定に際しても白熱の議論が続いた。現在パッケージ販売は曲がり角に来て、商業的に厳しい時期を迎えているが、劇場公開作品では3?5年準備をしてきたユニークな企画が続々と結実した。文化的にも表現的にもクリエイターと観客の世代的にも、おそらく今年がアニメーションにとっての大きな節目に位置付けられるはずだ。短編作品では各国における表現の幅やテーマの多様性が興味深かった。こなれたCG表現に驚きを感じる一方、原点回帰的な柔らかくも激しい躍動感を重視した手描き作品も強く印象に残った。
  • 伊藤 有壱
    次なる次元への進化に期待
    日本のアニメーションの幅広さと進化、アンバランスな現状を改めて俯瞰できた刺激的な審査体験だった。長編ではオリジナル企画が活況を呈し、プロならではの力強い挑戦や、リサーチや演出の緻密さ、レベルの高さが際立った。『四畳半神話大系』はTVシリーズ初の大賞受賞。圧倒的な「語り」の進行とビジュアルの相乗効果は、次なる次元への進化を期待させる。作家個人による類を見ない絵画表現作品『緑子 / MIDORI-KO』も審査で話題になった。こういった短編発の長編作品も評価されていくべき時代に突入したのだ。事前審査を担当した短編は、表現の可能性に挑戦する絶好の機会。にもかかわらず応募数が減少したことは残念。ぜひクリエイターの皆さんには積極的に応募していただきたい。また海外からの応募が増えたことで、評価する側にも独自の視点と成長が期待されていることも感じられた。
  • 古川 タク
    より豊かな制作環境づくりの必要性
    アニメーション部門は外国作品を含め425本の応募があった。今年の特徴は劇場公開などの長編が増えて、短編、TV、オリジナルビデオアニメーション(OVA)はほぼ前年並み。海外からの応募がやや増え、特にフランスからの応募が56本と、前年の21本から急増した。
    メディア芸術祭は、応募作品のみを審査する芸術祭なので、とにかく応募していただかないと審査の対象にならない。関係者各位のご協力を切に願うばかりである。
    ちまたでは昨今TVアニメーションに元気がないといわれる中で、湯浅政明監督の『四畳半神話大系』は動きのダイナミズムと斬新なグラフィックスに裏打ちされた物語の進行が圧倒的だ。脚本がいい。新しくて痛快無比なエンターテインメント作品だ。
    片渕須直監督の『マイマイ新子と千年の魔法』と原恵一監督の『カラフル』も今年の大収穫であった。 短編作品においては、世界中から実に多種多様な作品群が競い合い、つくり手の層の厚さを感じた。 外国からの応募作品には、社会的なテーマを扱った助成金による制作も多い。プロデュース能力の差なのだろうか。日本の短編はよくも悪くも、もう少しテーマが個人的であり、この特徴を生かせる舞台がなかなかないのが難しい。
    アーティスティックな短編を自主制作する以外は、50年前に我々が経験した状況とさして変わらない。中心は、子供向けTV番組やTVのCM。増えたのはPV(プロモーションビデオ)とWeb系ぐらいであろうか。何かいいアイデアはないものだろうか?